一口馬主はFXと仲良し
※これは平成23年までの古い内容です。平成24年以降はFXと一口馬主は改正により内部通算できなくなりましたのでご注意ください。
こんばんは。今年も残り2ヶ月、GⅠシーズンに入り、競馬も佳境を迎えますね。
年末を迎えるに当たって、考えておかないといけないのは税金ですよね。もちろん給与所得だけであれば年末調整だけで済んでしまうので、何も考える必要はないのですが、一口馬主で損益が出た場合にはちょっと知っておいたほうがいいことがあります。
今日は意外と知られていない可能性のある、一口馬主の損益とFXの損益の通算について、ちょっとお話したいと思います。
皆さんご存知のように、いわゆる一口馬主は匿名組合契約に分類され、一口馬主の損益は、所得税法上、雑所得に区分されます。この雑所得の金額は、残念ながら損益通算することはできません。
ここで、損益通算について簡単に説明しておくと、損益通算とは、「課税標準の計算において、不動産所得、事業所得、山林所得又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序及び方法により、他の各種所得の金額から控除することができる」という所得税法上の決まりです。
要するに、よくあるマンション投資とかで、不動産所得の金額の計算上損失が生じた場合に、その損失を給与所得の金額から控除できるので、給与で源泉された税金が還付されて、マンション投資はお得ですよ~っていう奴です。業者から電話かかってきますよね。あれは、まさにこの損益通算の決まりを使って節税?を勧めてくるわけです。
この損益通算は、「不動産所得、事業所得、山林所得又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額」だけしか対象にならないので、残念ながら、一口馬主の損失は「雑所得の損失」であるため、給与所得と通算したりはできないわけです。
しかし、あくまで損益通算ができないだけで、「雑所得」の範囲内であれば、内部通算することは可能です。
一番簡単な例を挙げると、社台の一口で100万円のもうけ(雑所得)がでて、キャロットで100万円の損失(これももちろん雑所得)が出た場合、この両者を通算すると、差引0円になり、雑所得はゼロとなります。これはよく知られていることですよね。
これと同様に、雑所得の金額同士であれば、損失と利益で通算することが可能です。
現実に一番ありがちなのが、FXと一口馬主の組み合わせです。FX(外国為替証拠金取引)の損益も一口馬主と同様に、「雑所得」に区分されます。したがって、FX(くりっく365を除く)の損益と一口馬主の損益は雑所得内で内部通算することができます。
今年、一口馬主で多大な利益(利益が20万円超)が出た人は確定申告義務があり、その人の税率にもよりますが、一定の場合には、確定申告で税金を追加で払わなければならない可能性もありえます。
このときに、もし、その人がFXで残念ながら損失が生じているときは、そのFXの損失と、一口馬主の利益を通算でき、既に20%源泉徴収されている一口馬主の利益に係る税額が確定申告で還付されます。
(具体例)
1.一口馬主の利益 50万円(源泉徴収税額10万円)
2.FXの損失 100万円
雑所得の金額=50万円-100万円=△50万円<0 ∴雑所得は0円
この場合、すでに源泉徴収されている10万円が確定申告により還付されます。
もちろん、FXで利益が出て、一口馬主で損失が生じた場合も、同様に通算できます。ただし、FXの利益からは通常は所得税は源泉徴収されていないはずなので、確定申告しても還付はありません。
※この場合、FXと一口馬主での内部通算後の雑所得の金額が20万円以下である場合は確定申告の必要はありません(他の所得が給与所得のみの場合)。
上のほうで、FXでも「くりっく365」は除くと書きましたが、いわゆる「くりっく365」は取引所経由の取引であるため、雑所得ではあるものの、一口馬主とは別区分の分離課税の雑所得となってしまうので、一口馬主とは通算できません。今回話題に挙げているのは、「外為オンライン」とか「外為ドットコム」とかの一般のFXのことです。
さて、長々書きましたが、このFXと一口馬主の内部通算は、実は本年限りです。なぜなら、来年からFXの損益はすべて分離課税の雑所得(現行のくりっく365と税制上統一される。)となるため、来年からは一口馬主とFXは仲良しさんではなくなってしまい、内部通算できなくなります。
一口馬主で今年かなり損が出ている人は、今年はFXでかなり儲けが出ても税金を払わなくて済む最後の年となります。心置きなくFXで儲けましょう!
(注)FXを勧めているわけではありません。私は去年FXで大損失が出ましたが、一口のほうも損失だったため、通算もクソもありませんでした。。
ちなみに、このFXの税制改正は、基本的には納税者有利となります。なぜなら、分離課税のほうのFX(くりっく365)は税制上の優遇がありまして、税率が15%でかつ3年間の損失の繰越が可能です。来年からは、外為オンラインとか、通常のFXもいくら儲けても税率は15%になり、かつ、大損失がでても3年間繰越せるという、「損しても安心?」な税制になります。
ちなみに、来年以降も一口馬主の損益と通算できる損益とは・・・
・割引債、利付債の償還差損益
・抵当証券の償還差損益、譲渡損益
・学校債、組合債の利子
などなど。よっぽどの財テク好きでもなければ手を出しそうに無いものばかりです。実質的には、「普通の人」にとっては、一口馬主の損益と通算できるものは来年以降はほとんどないということですね。
確定申告に関しては、また別の機会に、もう少し詳しく書きたいと思います。
Comments