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May 23, 2013

馬券と税金のつまらない話の続き

 今日の話は理屈っぽいだけで、本当に、心の底からつまらない話です。読む途中で嫌になると思いますので、読まないほうがいいと思います(笑)。じゃあ書くなって話ですが、自分の頭の整理として書いておきます。

 本日、例の馬券裁判の地裁の判決が出ました。
 判決における所得税の取扱いは、奇しくも、私が以前の「馬券と税金のつまらない話」で、落としどころとして考えた内容とほぼ同じ内容の取扱いになりました。

 ※つまらない話をもう一度読み直したいという奇特な方(笑)は、以下をお読みください。

馬券と税金のつまらない話

 判決文そのものを読んだわけではありませんが、各所の報道の内容を条文に照らして簡潔にまとめると以下の通りかと思います。

・無申告については当然有罪。
・所得税の取り扱いについては、今回のケースは、機械的・継続的に馬券を購入し、資産運用的な側面があるため、一時所得の意義である「営利を目的とする継続的行為から生ずる所得以外の一時の所得」にはあたらず、雑所得に区分される。
・雑所得に区分されるため、ハズレ馬券の購入費用は「必要経費」となる。したがって、現実の「もうけ」に対して課税されることになり、約5,200万円の納税額で済んだ。


 結局のところ、今回の被告の方は、実際の現金収入は1億5千万程度だったわけですから、6億円払えと言われても担税力がなく、ない袖は振れないわけです。今回の判決は裁判所が常識的に考えた結果かと思います。
 ひとまずは競馬界全体にとっては平和が戻ってきたというところでしょうか。しかしながら表面上の、とりあえずの判断があっただけで、現状のPAT投票を含めた競馬の事情と税法が乖離してしまっていることに変わりはありません。


 今回の件で色々と議論されている、「余暇としての」競馬の払い戻しによる所得が一時所得か雑所得については、一時所得に該当するというのは、所得税法上の一時所得の意義に照らしても明らかです。その点は裁判所の判断も明らかでした。

 一応、条文の流れに沿って、今回の件が「雑所得」と判断された理由、また、それに関連する問題を考えておきたいと思います。

 まず、「雑所得」と判断されたということについですが、これは、積極的に「雑所得」と判断されたわけではなく、所得税法上の10種の所得のうち、他の9種の所得のいずれにも当てはまらないため、今回のケースは雑所得であると判断されたということだと思います。なぜなら、条文では、雑所得については、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」と定義されており、積極的に雑所得の内容を定義していないためです。

 どうでもいい話に聞こえますが、結構重要です。報道の記事を読むと、今回、「継続的行為だから」「営利を目的とする資産運用とみられるから」という点で積極的に雑所得に区分されたように読めてしまいますが、そういう見方をすると、じゃあ、事業的規模でやってたら馬券の収入は事業所得なのかという議論になってしまいます。実際、過去にそういう論点で異議申し立てとかがあったという話をどこかで読んだこともあります。

 本当に事業的規模でやってるんなら、事業所得と認めてもいいのでは?と思うかもしれませんが、そうすると、非常にマズイことが生じます。事業所得は損益通算の対象となる所得なので、もし馬券の損失が事業所得に区分されたとなると、その馬券の損失を他の事業所得の金額や、給与所得及び不動産所得の金額などから控除できてしまいます。馬券で損すると給与所得の税金が還付されるなんてことになったら、ギャンブルをやらない人の国民感情としては許せないでしょう。まあ、そういうことは国も裁判所も認めたくないので、馬券の所得が事業所得と認められることは、今後も半永久的にないでしょう。

 ただ、今回、事情によっては雑所得とは認められることになったので、その場合でも、マズイ事情が発生することは考えられます。今回の事件のように、反復・継続して機械的に馬券を買い続けた人で、今回と逆に損失が生じている場合は、雑所得で申告すれば、他の雑所得の金額と内部通算ができてしまうからです。
 総合課税の雑所得は、代表的なものは、外貨預金の為替差損益、作家でない人の原稿料、講演料などが挙げられます。
 例えば、会社員で給料をもらっているけれど、それとは別に雑誌で原稿を書いているという人もいるでしょう。原稿料は雑所得です。その人が上記の資産運用として機械的な馬券購入をしている人だったら、その馬券の損失は雑所得に区分されます。雑所得の損失の金額ですから、給与所得とは損益通算はできません。ここまでは問題ないです。ところが、原稿料(通常10%の源泉徴収)とは同じ雑所得の中で内部通算ができることになってしまい、その10%源泉徴収額が馬券の損失によって還付されることになってしまいます。
 ハズレ馬券で税金が還付されるという、やはり国民感情としてはあってはならないことが起きてしまうわけです。

 今回の判決がそのまま確定判決となるようであれば、まず真っ先にその点をクリアにしないといけないでしょう。おそらくは、租税特別措置法とかで、「馬券の継続的・機械的購入によって雑所得の金額の計算上生じた損失の金額はないものとみなす。」というような整備が必要になるでしょう。

 なお、余暇として買った馬券の所得も雑所得に区分されたらそれでよいのかというと、その場合、一時所得の計算にあった課税標準が2分の1になるという特典がなくなりますので、今度はWIN5で2億円当たったときに半分くらい税金でとられてしまうという悲しいことになってしまいますが。。

 考えれば考えるほど難しく、色々考え始めたらキリがないので、このへんでやめておきます。
 競馬ファン全体が納得できる結論が出るまでは、まだ紆余曲折がありそうですが、競馬の将来に光が当たるような結論を望みたいです。


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Comments

競馬悟空さん、こんばんは^^

ダービーウィークに判決という粋な(?)結末でしたね。
裁判官の判断は納得というかまともでホッとしましたが、農水省がまるで他人事のダンマリというのが激おこプンプン丸です。

結局グレーゾーンに新たな解釈が加わり、もうわけが分かりません。
仰るように法整備が必要な時が来てますよね。

馬券の衰退は一口馬主の衰退にも繋がりますし、なんとか早い対応を願いたいですね。

Posted by: コジーン | May 23, 2013 at 10:07 PM

大金勝負なら直接馬券を買えと言う事なら、後楽園ですかね?

Posted by: 。 | May 24, 2013 at 01:09 AM

コジーンさん、こんにちは!
裁判官の判断は、なんとかして被告が破滅しないようにしたいという気持ちがあったんでしょうね。法万能ではありませんので妥当な内容だったように思います。農水省は知らんぷりですね。縦割り行政ですからね。。現行の所得税法のままでは、いつかまた問題が生じることは明らかなので、時代に合った内容に少しずつでも変革して、また、競馬が続くように関係者にも努力してもらいたいですね。

Posted by: 競馬悟空 | May 24, 2013 at 05:46 PM

。さん、こんにちは!
そうですね、結局PATを使うとロクなことがないってことになります。馬券は競馬場又はWINSで。。って一昔前のJRAの広告みたいですが、かえってこれで競馬場に人が戻ってきてくれたら嬉しいかもしれません(笑)。

Posted by: 競馬悟空 | May 24, 2013 at 05:48 PM

(損益通算)
「第六十九条  総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。」となっており、配当所得、給与所得、一時所得及び雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。つまり、競馬の赤字を給与所得等と損益通算し、源泉所得税や予定納税の還付を受けることはできません。また、競走馬を売買したときの譲渡損失も同様です。


Posted by: woo | May 28, 2013 at 07:06 PM

(追記)検察及び国税の勝馬投票による利益は「一時所得」と主張したのは、毎日、毎月勝っても、その行為自体が偶然に左右されるもの(博打)であり、労働の対価でもなく、資産の譲渡の対価でもないので、一時的に発生する一時所得であると主張したのだと思います。

Posted by: woo | May 28, 2013 at 07:18 PM

「営利を目的とする継続的行為」の考え方は、所得税法創設の当時から所得税の課税所得と非課税所得を区別する基準として設けられています。これは、所得税制度の創設当時から昭和十四年の改正までは、「営利の事業に属さない一時の所得」は非課税所得とされていたが、このうちには「資産の譲渡により一時に発した所得」も含むものとされていました。昭和十五年の改正で分類所得税及び総合所得税の併課制度が採られたことに伴い「分類所得税における乙種の事業所得又は総合所得税におけるその他の所得の所得中営利を目的とする継続行為から生じた所得以外の一時所得」を非課税とする改正が行われました。昭和二十二年の改正では、総合所得税制度になり同様に非課税とされていた。昭和二十三年の改正では、従来非課税とされてきた一時の所得が、一時所得、譲渡所得として所得税の課税対象とされた経緯があります。この「営利を目的とする継続的行為」による所得以外の一時の所得を非課税所得とされてきたのは、当時の税制として、定型的な所得源泉によらない、又は規則的回帰性をもたない相続や資産売却による損益など一時的な所得には、所得税を課すべきではないとする考え方がとられていました。(つづく)

Posted by: woo | May 28, 2013 at 07:43 PM

wooさん、こんにちは!
つまらない話を読んでいただきありがとうございます。
まず、法69の損益通算についてですが、馬券の所得(損失)が一時所得又は雑所得とされる限りは、当然損益通算は不可能です。ただし、今回の機械的な投票行為による所得が、「事業的規模」と認められれば事業所得となりうる可能性もあり、その場合は、馬券の損失を給与所得から控除することも可能となります。
 競走馬の譲渡損失については、生活に通常必要でない資産の損失であり、他の譲渡所得(総合)と内部通算のうえ、通算しきれない金額は「競走馬の保有に係る雑所得」とのみ損益通算可能であり、控除しきれない金額は生じなかったものとみなされます。したがって競走馬の賞金収入で雑所得があり、その雑所得から競走馬の譲渡損失を控除(所得限度)すれば、賞金支払い時に源泉されたJRA源泉税が還付されることにはなりえます。
 一時所得に該当すると国税側が判断したのは、条文通りに判断すれば当然のことですよね。ただ、条文にこだわって、担税力のない人から税金を取るような感じになったのは残念です。
 一時所得の歴史については考えたこともありませんでした。戦前から色々と変わってきたんですね。全然知りませんでした。

Posted by: 競馬悟空 | May 29, 2013 at 08:14 AM

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