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November 08, 2013

良馬と名馬

 私は三国志が好きなのですが、三国志の正史では、色んな書物から、故事などの引用があります。その中で面白い話がありました。「淮南子(えなんじ)」という書物に、相馬の名人である伯楽の逸話で、こういう話が載っているそうです。

"秦の穆公が、伯楽に向かって、
「君は年老いてしまった。君の子供のうちに、君の代わりに名馬を探せる者はいるか。」
と聞くと、伯楽は答えた、
「良馬というのは形体・筋骨によって鑑定することができます。しかし、天下の名馬を鑑定するとなると、名馬の相はなかなか表にあらわれず、消え去ったようであり、なくなったようであり、ちらりと見えるとたちまちどこかへ行ってしまい、ぼんやりとしてしまいます。私の子供はみな才能が劣っておりまして、良馬ならば見分けることができますが、天下の名馬を見分けることはできません。天下の名馬であれば、私と一緒に仕事をしている「九方イン」(インは土ヘンに西、その下に土)という者がおりまして、彼の馬の鑑定ぶりは私に劣りません。どうか彼を引見なさってください。」
 穆公は九方インを謁見し、彼に馬を探させた。九方インが3か月後に帰ってきて、
「すでに馬を手に入れました。砂丘におります。」
と報告した。穆公が、
「どんな馬か。」
と尋ねると、
「牝馬で毛色は茶色(鹿毛?)です。」
と答えた。
 人をやってこれを取りに行かせたところ、牡馬で黒い馬だった。穆公は不機嫌になり、伯楽を召して、
「ダメだな、君が馬を探させた者は。毛色や牡牝さえ区別できないのに、いったいどうして名馬を識別できるのか。」
と言った。
 伯楽は深いため息をついて、
「ついにそこまで到達いたしましたか。これこそ私のような者が千人・万人いても数の内に入らないほどの技術です。九方インの観察しているものは天のはたらきでありまして、馬の精気をつかみながら、その他のおおまかなところは敢えて見落とし、馬の内側に集中して外側を忘れてしまい、見るべき点を見ながらも、見なくてもよい点は見落としているのです。目を注ぐべき点に目を注ぎながら、目を注がなくても良い点は見落としているのです。彼の判断しているものは馬より以上の何かでしょう。」
と言った。
 馬がやってくると、はたせるかな天下の名馬であった。」"
***以上 筑摩書房 正史三国志5 より抜粋***


 なかなか面白い話ですよね。まあ、現実に黒鹿毛の牡馬を鹿毛の牝馬ですと言ったら、そのうち誰も口をきいてくれなくなりそうですが(笑)
 この淮南子という書物は老荘思想の書物らしく、人を外見で判断してはいけないとか、そういう教えなのかもしれませんが、もちろんここでそんな話をするつもりはありません。ここでは忠実に馬の話として考えましょう。

 まず最初に、残念なのは、伯楽が言うには、どうやら名馬を見抜く能力は「才能」が必要らしく、しかもここで言う才能はどうやら「天賦の才」、要するに生まれつきの才能を意味しているように思えます。伯楽の子供たちですら才能がないと言われているくらいですから、この「才能」はかなり難しいものに思えます。

 次に、九方インの才能について考えると、九方インは馬の精気、現代で我々がよく言う、「オーラ」とか「雰囲気」のようなものを感じ取って、天下の名馬を見分けていたように思えます。「馬の内側」という話もありますので、もしかすると馬の「心肺能力」も読み取っていたのかもしれません。
 これは伯楽曰く「才能」なわけですから、そう考えると、私も含めて、普段パドックで「オーラが凄い」とか「雰囲気がいい」とか言っているのはだいたいデタラメということになりそうです(笑)。

 さて、では天下の名馬と言って、最近だとどの馬を思い浮かべますか?

 まずは、ディープインパクトでしょうねえ。戦績もパフォーマンスも最近では文句なし、天下の名馬と言えるでしょう。
 クロフネも天下の名馬ですよね。ジャパンカップダートも凄かったですが、その前の武蔵野Sの1分33秒3というレコードには度肝を抜かれましたね。ダートではいずれも理解不能な異次元のレコードタイムで圧勝。天下の名馬のふさわしい馬でした。
 それから、キングカメハメハも名馬でしたねえ。NHKマイルとダービーを連勝して、日本の競馬史を塗り替えました。ダービーはレコード勝ちでしたね。これも天下の名馬にふさわしい馬でしょう。

 と、気づきましたかね。これらの馬を選んだのは一人の人物です。私が聞いた話では、この方は、馬の「目」を見ているとか。この淮南子の話を読んだ後で考えると、おそらく「目」というのは、説明するのが面倒というか、説明しようがないから、他人に聞かれたらとりあえずそう言っているのではないかなと思いますね。おそらくこの話にある、「馬の内側」を見ているんだと思います。きっと天賦の才なのでしょう。

 話を総合すると、残念ながら私のような凡人は天下の名馬を見分けることはできそうもありません。
 しかし、救いがあります。伯楽が言うには、「良馬」だったら「才能」が足りなくても見分けることができるそうです。この「良馬」をどのレベルの馬と定義するかは色々と難しいですが、オープン馬又は1億円くらい稼ぐ馬と考えるのはどうでしょうか。このレベルの「良馬」なら、伯楽が言う「形体・筋骨」を見ることでなんとかなりそうです。
 「形体・筋骨」というのは、まさに、「バランス」や「筋肉の質や量」ということだと思います。とりあえず、才能に恵まれていないと思う人は、ここを目指したほうが良さそうです。

 一応、伯楽は九方インについて、「ついにそこまで到達いたしましたか」と言っていることを考えると、その「才能」とやらも、もしかしたら後天的にもついたり、増幅したりするのかもしれませんね。とりあえず希望は捨てないでおきましょう(笑)。

 あと、九方インのように3か月も馬探しの旅に出たら、普段仕事している人はクビになりますからね(笑)。身の丈に合った馬探しにとどめておきましょう(笑)。


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Comments

競馬悟空さん、おはようございます。
相変わらず深い所をついて来ますね(笑)
あのお方の相馬眼は凄いと思います。殆どのG1を勝っているのですから。 自分には無理な所だと思いますが、少しでも近づきたいと思っています。
幸いに2歳馬が順調なので、後、1頭の2歳馬が結果を出してくれれば、しばらく自分なりのパターンが出来たと思って、頑張って行きたいと思います。

Posted by: パパディー | November 09, 2013 at 11:40 AM

パパディーさん、こんばんは!
本当にすごい人が世の中にはいるものです。なんとか少しでも近づきたいですよね。ご自身のパターンを作るというのは重要だと思いますよ。パパディーさんは本当に順調な一口馬主生活だと思うので、これからもさらに上を目指せると思いますよ!

Posted by: 競馬悟空 | November 10, 2013 at 07:10 PM

競馬悟空さん、こんばんは。
まずはベルシャザール、重賞勝ちおめでとうございます。
自分の出資パターンを確定させるのは大事ですね。厩舎だけは気をつけますが…。
今の所、関西馬をメインに行ってしまいます。それも一部の厩舎ですが…。
悟空さんを見習って、頑張って行きたいと思います。
これからもご指導を宜しくお願いいたします。

Posted by: パパディー | November 10, 2013 at 09:46 PM

パパディーさん、どうもありがとうございます!ノドや怪我など色々あった馬ですが、ここまでこれたことをうれしく思っています。本当に一口馬主っていうのは、忍耐力が試される趣味だなと思います。また、色んな情報に踊らされない精神力も必要ですよね。厩舎も含めて、自分のスタイルを貫いたほうが、きっと楽しいんだと思います。こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

Posted by: 競馬悟空 | November 11, 2013 at 12:00 PM

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