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February 05, 2014

2014年一口馬主と確定申告

 今年も確定申告の時期が近づいてきました。そこで今日は、昨年に書いた確定申告がらみの話を再掲しておきたいと思います。先日友人にも確定申告のことをきかれましたので、気になっている方も多いのかなと思います。内容については、昨年のままです。特に関連する改正もありませんでしたし、昨年かなり気合を入れて書きましたので、さすがに内容的にはこれ以上書くこともありません。

 別にこんな長ったらしい記事を読まなくても、よくわからなければ税務署にきけば教えてくれると思いますが、何事も理屈がわからないと納得できないという方もいらっしゃるでしょうし、自分が損をしてるんじゃないかと気になる方もおられるでしょう。そういう方の疑問の解消に役立てば何よりです。

 なお、あらかじめ申し上げておきますが、税金に関する事情は個人ごとに千差万別であり、すべてをフォローすることはできません。疑問等がある場合は、最寄りの税務署に相談していただきますようお願いいたします。


*****

Q1:所得税では「損益通算」により、損失の金額を利益と通算できるという規定があると聞きました。給与所得者の私でも、一口馬主で出た損失の金額を、給与所得から控除して税金の還付を受けることができますか?

A1:できません。
 まず、一口馬主の所得(利益)及び損失は所得税法上、「雑所得」に区分されます。損益通算というのは、「不動産所得、事業所得、山林所得又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序・方法により、他の各種所得の金額と通算できる。」という規定です。この中に「雑所得」は入っていません。したがって、一口馬主の所得及び損失は、給与所得を含めた他のいずれの所得とも損益通算はできません。


Q2:一口馬主も匿名組合契約で金融商品ですし、上場株式も金融商品の仲間ですから、上場株式の利益又は損失と一口馬主の損失又は利益を通算することはできますか?

A2:できません。
 上場株式の所得は分離課税です。一方、一口馬主の所得は総合課税の雑所得です。その名の通り、株式の所得は他の所得と「分離」して課税する仕組みであるため、原則として他の総合課税の所得と通算することはありません。したがって、総合課税である一口馬主の所得及び損失とは通算できません。


Q3:確か以前はFX(くりっく365以外のもの)の所得及び損失は、一口馬主の損失及び所得と通算できましたよね?これは今年も大丈夫ですか?

A3:改正により平成24年から通算できなくなりました。
 確かに、平成23年分まではFXと一口馬主は通算できました。なぜなら、いずれも同じ「総合課税の雑所得」であったため、雑所得内での内部通算が可能だったからです。ところが、平成24年からは、FXのほうが、「分離課税の雑所得」の区分に引っ越してしまいました。一口馬主が総合所得、FXが分離所得と分かれてしまったため、平成24年分からは一口馬主とFXは通算できなくなりました。
 これは、決して納税者に不利な改正が行われたわけではありません。FXのほうは分離課税になったことにより、所得税の税率も今まで最高40%の税率だったのが、定率(15%)になりました。また、何より大きいのは、3年間の損失の繰越が認められるようになりました。以前はFXも一口馬主と同じ、一番不利な税制だったのが、今は大きくランクアップし、納税者有利な取り扱いとなっています。
 まあ、その代償として一口馬主とは通算できなくなってしまいましたが、これはやむを得ないですね。


Q4:じゃあ、何か一口馬主の所得及び損失と通算できるものって残っていないんですか?

A4:上で話した通り、一口馬主の所得及び損失は損益通算はできません。可能なのは同じ「総合課税の雑所得」に区分されるもの同士での内部通算だけです。総合課税の雑所得となるもので、一般人に関係ありそうなものと言ったら、あとは外貨預金の為替差損益くらいでしょうか。外貨預金の為替差損益と一口馬主の所得及び損失は、今までも、これからも、通算できます。


Q5:雑所得は損益通算できないっていうのは納得しましたが、所得税法には、「雑損失の繰越控除」という規定があると聞きました。ということは、雑所得の損失である一口馬主の損失も、来年以降に繰り越して、来年利益がでたら通算して税金の還付を受けられるんじゃないですか?

A5:まったく違います。一口馬主の損失は翌年以降に繰り越せません。
 確かに、所得税法には「雑損失の繰越控除」という規定があります。しかし、ここで言う「雑損失」は、「雑所得の損失」とは全然違うものです。
 所得税法上の雑損失というのは、震災などの災害等により、住宅・家財などの生活に通常必要な資産について生じた損失の金額のことです。こういう天変地異のような災害によって損失を被った人から税金を取るのは忍びないので、その損失を控除し、また控除しきれない場合は翌年以降3年間繰り越して、税金を軽減又は免除してあげるというのが「雑損失の繰越控除」というものです。
 一口馬主の損失は、私たちが、単なる趣味、要するに無駄遣いで生じた損失ですので、「雑損失」とは似ても似つかない種類の損失です。「雑所得の損失」には、繰越控除の規定など一切ありませんので、損失を翌年に繰り越すことはできません。損失の金額が余ったとしても、その損失の金額は今年で打ち切りということです。


Q6:会社から給料をもらっている給与所得者(他の所得は一口馬主だけ)ですが、結局のところ自分が確定申告しなければいけないのかどうなのかがはっきりしません。一番怖いのは、確定申告する必要もないのに確定申告をして、余計に税金を払うことにならないのかということです。余計なことをして損をしたくありません。

A6:必要もないのに確定申告をして余計に税金を払うという事態は発生しません
 どういうことかというと、所得税法120条の確定申告(確定所得申告)は義務であり、選択制ではないということです。要するに、税金を払わないといけない人は、必ず確定申告をして税金を払うように法律で定められているということです。
 逆に、給与所得者で、所得税を源泉徴収されており、かつ、何らの還付も生じない人は、確定申告したくてもできません。こういう人は、法律上、「確定申告の義務がない人」になります。この場合、「義務がない=申告できない」ということを意味しており、私は税務署が好きだからとか、自分の勉強のためにとかで税務署に行って確定申告させてくれと言っても受け付けてもらえません。そういう変な人が税務署に押し寄せたら、税務署の事務が混乱して行列がさらに長くなってしまうため、そういう意味のないことはできないようになっています。
 クラブからの案内に書いてある、「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計が20万円超の方」というのは、申告して得になろうが損になろうが、法律上必ず申告をしなければいけない人のことです。この人が確定申告をしないと、確定申告義務違反です。要するに法律違反になります。
 比較のために言うと、給与所得者(源泉徴収されており、医療費控除その他の申告による所得控除がないことが前提)で、一口馬主の雑所得が△10万円、かつ、その雑所得について1円も源泉徴収されていない人は、確定申告する必要はない(したくてもできない)人です。この場合は、仮に申告しても1円も戻ってこないし、1円も支払うこともないので、当然といえば当然ということになります。


Q7:余計なことをして税金が増えるということはなく、法律違反になりたくなければ、義務がある場合は必ず確定申告しなければならないということはわかりました。しかし、上記の説明を読んでも、自分が確定申告義務があるのかないのか今一つはっきりしません。というより、余計混乱してしまいました。何かパターン別の事例とかありませんか?

A7:以下に考えうる限りのパターンを示します。

※特に断りがない限り、給与所得者で年末調整を受けており、かつ、医療費控除等の申告による所得控除がない人が前提です。
※その年において支払いを受けるべき給与の額が2,000万円以下の方が前提です。年収2000万円超の方は必ず確定申告しなければなりません。
※一口馬主の所得とは、クラブから来た計算書の、(収入金額-必要経費)、のことです。クラブの書類上はマイナスの金額でもゼロと表示されている場合がありますが、他の一口馬主クラブの所得と内部通算するときは、ゼロではなく、マイナスの金額を使います。


①給与所得者で、一口馬主の雑所得の合計が20万円以下の方

(例1)
給与所得 500万円
一口馬主クラブAの所得 30万円
一口馬主クラブBの所得 △50万円
源泉徴収税額 6万円

 この場合、クラブAとクラブBの雑所得を通算(内部通算)すると、△20万円となり、「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計が20万円超の方」には該当しないこととなりますので、確定申告義務はありません。
 しかし、この方の場合、雑所得がマイナス(△20万円)で、かつ、源泉徴収税額がありますので、所得税法122条(還付を受けるための申告)の規定により、確定申告することができます。
 確定申告義務がない人が全員確定申告できないことになってしまうと、こういう、損しているのに税金だけ取られたままの人を救うことができなくなってしまいます。そのため、確定申告義務がなくても確定申告できるという規定が別途設けられているわけです。この122条は、あくまで、「できる」規定で、義務ではありませんので、源泉徴収税額が1,000円に満たないなど、時間の無駄だと思われる場合は、そのまま確定申告しないでおいても何ら問題はありません。税務署側は、得するだけで、損はないですから、来ないでくれればむしろありがたいという感じです。源泉徴収税額というのは、あくまでその年分の支払うべき税額の前払い分です。この場合、前払い分が多すぎただけなので、「返して欲しければ税務署まで来い、面倒なら来なくてもいいよ。」ということです。


(例2)
給与所得 500万円
一口馬主クラブAの所得 △10万円
源泉徴収税額 1万円

 この方も上記の例1と同じで、雑所得がマイナス(△10万円)で、かつ、源泉徴収税額がありますので、法122条の確定申告(還付を受けるための申告)により、源泉徴収税額が還付されます。
 源泉徴収税額というのは、もうかった利益に対する税金の前払いだから、何で損してるのに源泉されてるんだ?と不思議に思うかもしれません。これは、Aクラブ内の、X馬が結構活躍して、出資返戻金以上の配当があったためそのX馬の配当について所得税が源泉徴収されたものの、X馬以外の馬が軒並み活躍できず大損失だったため、Aクラブでの所得としては、合計したら△10万円になったというケースです。
 オレは今年は大損だから確定申告しなくていいんだ、と間違った理解をしてしまうと1万円損することになりますので注意してください。なお、法122条の申告ですから、上記と同じ「できる」規定で、義務ではありません。1万円ごときで税務署など行ってられるか!という太っ腹な方は、もちろん何もしなくても大丈夫です。


(例3)
給与所得 500万円
一口馬主クラブAの所得 △10万円
一口馬主クラブBの所得 △20万円
源泉徴収税額 ゼロ

 この方は例2の方と何が違うかと言うと、源泉徴収税額がありません。つまり、残念ながら、いずれのクラブのいずれの出資馬も出資返戻金を超えるような配当を得られなかったという、大変残念な成績だった方ということになります。この場合も、もちろん確定申告義務はありません。また源泉所得税額がゼロですので、法122条の確定申告(還付を受けるための申告)により、還付を受けることもありません。したがって、このパターンの場合は、「何もしない」というのが正解となります。例2の場合と例3の場合を混同してしまうと、例2に該当した場合に損をすることにもなりかねませんので、心配な方は、もう一度よくクラブからの資料を見直してみてください。


②給与所得者で、一口馬主の雑所得の合計が20万円超の方

※この場合の確定申告は、法120条の確定申告(確定所得申告)となりますので、「できる」規定ではなく、「しなけれればならない」という規定です。したがって、万が一、源泉徴収税額が「還付」となる場合であっても、必ず確定申告をする必要があります。ちょっと変な感じはしますが、「還付」だから何もしなくてもいいというわけではないのでご注意ください。


(例4)
給与所得 500万円
一口馬主クラブAの所得 30万円
源泉徴収税額 6万円

 一番わかりやすい、「確定申告しなければいけない人」の代表的なパターンです。「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計が20万円超の方」に当たりますから当然ですね。この方の場合、追納(追加で税金を支払う)となるか還付となるかは細かい計算をしなければわかりませんが、仮に追納になるとしても数千円でしょう。そんなにビクビクすることはありません。いずれにしろ、「確定申告しなければいけない」、要するに確定申告義務があることだけは確かですので、2/16から3/15までの間に最寄りの税務署で確定申告を行ってください。


(例5)
給与所得 200万円
一口馬主クラブAの所得 30万円
源泉徴収税額 6万円

 この方も、当然、「確定申告しなければいけない人」です。理由は上記例4と同じです。ただし、この方の場合は、おそらく還付になると思われます。この方の場合、本年分の給与所得が200万円と、一口馬主のようなお金のかかる趣味をやられている方の中ではかなり低いほうだと思います。ご病気等で休職されていた方とかの場合に、こういうパターンがありえると思います。
 雑所得がある(プラス)のになぜ還付になるかについてですが、それは税率のマジックがあるからです。昨年に書いた、「一口馬主と税金に関するよくある事例」の記事でも詳しく書きましたが、源泉徴収の税率よりも、実際の税率が低くなるという逆転現象が起きるためです。
 一口馬主は、「匿名組合契約」であり、匿名組合契約の場合の源泉徴収の税率は20%と決まっています。だから、所得の30万円に対して20%の6万円が源泉徴収されているわけです(注:実際にはクラブから支払われる際に色々と細かい内容があるので、ピッタリ2割が源泉されているわけではない)。
 しかしながら、この例の方の場合は、給与所得が200万円で、雑所得の30万円を加えても230万円です。これらの所得を合計しても330万円以下であり、所得税の税率は10%となります。このため、30万円に対して6万円は取られ過ぎであり、30万円の10%の3万円が適正な税額ということになります。
※話の都合上、基礎控除を含めた所得控除は無視しています。
 源泉徴収税額というのは、あくまで本来払うべき税額の前払い分だと言いました。この方の場合、本年は国が予想していたほど本業で稼がなかったため、その前払い分6万円のうち、3万円が戻ってくるということになります。
 還付になるけれども、忙しいし、面倒だから確定申告しなくてもいいやと思うかもしれませんが、このパターンの場合は、確定申告は義務です。給与所得があり、かつ、「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計が20万円超の方」に当たりますので、法120条による確定申告(確定所得申告)を行う義務がありますので、必ず確定申告を行ってください。申告しないほうが税務署が得するんだからいいじゃないかと思うかもしれませんが、法律上は申告しなければいけないということになります。まあ実際は、還付ですから放っておいても何も起きないと思いますが。。


(例6)
給与所得 1,900万円
一口馬主クラブAの所得 30万円
源泉徴収税額 6万円

 この方はもちろん確定申告義務があります。理由は上記と同じです。しかも、この方の場合は給与所得が1,800万円を超えていますので、税率が最高税率の40%となり、ほぼ確実に追納となるでしょう。大雑把な計算で、さらに6万円程度の追納になるでしょう。まあ、本業でたくさんの利益が出ている以上、税率が高くなるのは仕方ないですね。


Q8:よく、一口馬主でもうけ過ぎて税率が上がってしまい、損をするというようなことを聞きますが、せっかくもうかったのにもかかわらず、税金で損をするなんて、おかしくないですか?

A8:いや、これは、損したように感じるだけで、実際には損はしてません。超過累進税率の計算を誤って理解している人が結構多いです。この間、何かのテレビでクイズにもなっていましたが、所得が一定額を超えたからといって、その所得全体の税率が上がるわけではありません。具体的に見てみましょう。

Aさん
給与所得 300万円
一口馬主クラブAの所得 40万円
合計340万円

Bさん
給与所得 330万円

 先ほど説明したとおり、所得が195万円超330万円以下の人は税率10%、330万円超695万円以下の人は税率20%と計算してしまうと、

Aさん:340万円×20%=68万円
Bさん:330万円×10%=33万円

と、所得が10万円しか違わないのに、税金は25万も違うというとんでもない逆転現象が起きてしまいます。
 実際はこんな理不尽なことは発生しません。

 なぜなら、0円~195万円までの部分は5%、195万円超330万円以下の部分は10%、330万円超695万円以下の部分は20%と、段階的に計算されるからです。
 この計算方式に従って、Aさん、Bさんの計算を行うと次の通りになります。

Aさん:195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(340万円-330万円)×20%=252,500円
Bさん:195万円×5%+(330万円-195万円)×10%=232,500円

 これなら納得です。Bさんのほうが10万円所得が多いので、その10万円についてのみ、20%である2万円を余計に納税しなければならないのは当然のことですよね。

 で、何で損した気分になる人がいるのかというと、さっきの(例6)のようなパターンで、追納になる場合があるからなんですよね。一口馬主で儲かったと思ったのに、3月になったら、税金を追加で納めろって話になった。損した。と、まあこういうわけです。一口馬主でも源泉徴収でもう税金払っているのに、もちろん給与からも源泉徴収税額が天引きされているのに、また税金払うのか!と腹が立つやら損した気分になるやら。でもこれは仕方のないことです。もうけが出たら、税金も発生するのは当たり前のことですから。気を付けておきたいのは、一口馬主でもうかったからといって、お金を全部使ってしまわないことでしょうか。大きく儲かっている場合は、万が一の追納に備えておく必要がありそうです。
 いろいろ考えると、実は一番損した気分にならないのは、一口馬主の損益がぴったりプラマイゼロになる人なのかもしれませんね。

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Comments

以前にも質問させていただいたものです。HNを何にしていたか忘れてしまいましたが。
自分のコメントを探しても見つからなかったので…


28年度でキャロから源泉引かれてたので
こちらのQ6Q7を参考に思い切って税務署行って確定申告してみたら

なんと、ほぼほぼ徴収額満額を還付してもらえることとなりました。8千円程ですが。


これも一重に、初心者に対して一口馬主の有益な情報を公開してくれている悟空さんのお陰です。コメント欄では伝えきれないくらい感謝しています。ありがとうございます。


初出資から3頭目にしてメートルダールに出資することができ、一口を楽しませていただいてます。


最後になりましたが、一読者として応援しています。長々と失礼いたしました。

Posted by: C | February 18, 2017 at 09:18 AM

Cさん、こんにちは!
ありがとうございます。昔書いた記事がお役に立ったのであれば何よりです。何もしないと税務署はお金を返してくれない仕組みになっていますので、やれることはやったほうがいいですよね。
楽しめる馬に出資できると週末が楽しみになりますよね。怪我なく活躍してくれることをいつも祈っています。
最近は更新も少なくなっていますが、また見に来ていていただければ幸いです。

Posted by: 競馬悟空 | February 19, 2017 at 08:31 AM

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