新田明男って誰だよって話ですが、タッチの新田です。
タッチの新田と言っても、何だそれは、という人もいるでしょう。
「タッチ」は、あだち充の大ヒット漫画で、アニメや映画にもなりました。マンガ自体は大分古くなりましたが、以前アメトーークで、タッチ芸人として取り上げられたりもするほどの名作マンガです。
わからない方は、マンガ喫茶なりで原作を読んでもらうとして(笑)、新田の言葉についです。
ものすごく大雑把に背景を説明すると、新田明男は、タッチの主人公である上杉達也のライバルです。両者は高校野球の同じ地区の別の高校におり、両者とも当然甲子園出場を目指しているわけです。上杉達也は投手で、新田は打者です。
さらに、上杉達也は事故で亡くなった伝説の名投手上杉和也の双子の兄で、新田は甲子園準優勝チームの天才スラッガーという設定です。
ある日、主人公の上杉達也の所属する明青学園と、新田明男の属する須見工業とが練習試合を行います。
ところが、色々あって、明青の監督は控え投手を先発させ、達也は外野の守備に回されます。
達也としては、一刻も早く新田に控え投手を打ち崩してもらって、自分と新田の対決を実現させたい。そういう心境にありました。
ところが、第一打席で、新田はその明青の控え投手に対し、見逃しの三振に終わります。
新田ともあろうものが、一体どうなっているのかと達也の心中は穏やかではありません。
明青の攻撃中、三塁に進塁した達也は、サードの守備についている新田に話しかけます。
達也 「なんなんだよ、さっきの三振は?オレにずっとライトを守らせるつもりか。」
「さっさとKOして、オレに投げさせてみろよ!」
新田 「かんたんに言うな。いいピッチャーだぜあいつ。うちの打線でも相当てこずるよ。」
達也 「なにいってやんでぇ、見逃しの三振なんてしやがって。」
「とにかくバット振らなきゃしようがねえだろ。」
新田 「野球が一回勝負なら、そうするよ。」
とまあ、こういうシーンがあります。原作読んでない人には、状況が頭に浮かばず、なんだかわからないことだらけだと思います。すいません。
このシーン、達也の言うことももっともですよね。大事な場面で見逃しの三振。本当にガッカリだと。
それに対する新田の言葉は、深いものがあります。「一回勝負ならそうする。」とだけ答えて、あまり多くを語りません。まあ、あだち充のマンガ自体が、こういうやたらと伏線を含んだセリフまわしが多いのですが、まあ言いたいことはわかります。
要するに、一打席ですべてが決まるわけではなく、要は大事な場面で打てるかどうかが大事だと。そういうことも含めて駆け引きだし、勝負であると。
さすが、甲子園準優勝校の4番打者。言うことが違いますね(笑)。
マンガの話はここまで。この話、競馬にも通ずるなと、いつも読むたびに思ってしまいます。
控えて届かなかった。抑えて掛かった。内を突いて包まれた。などなど。なんとも納得のいかない騎乗があります。
それに対し、先行していたら届いていた。無理に抑えずに行かせていたら勝っていた。外に出していたら差し切っていた。などなど。いろんな感情が出てきます。
実際、単純に按上のミスということもあるでしょうが、先を見据えてということもあるわけです。まさに、一回勝負ではないからこそ、あえてそういう騎乗になったということもあります。
逆に、勝ちにこだわったせいで、その後のその馬の一生が左右されることもありえます。逃げるしかなくなってしまったり、うまく脚をためることができなくなったり。
馬券を買うだけの立場であれば、その日そのときのレースだけが大事であるので、見逃し三振のようなレース振りに腹が立つのは至極当然です。私だって、悪態をつくでしょう。
しかし、一口の視点で考えた場合は、先ほどの新田明男の言葉をよく玩味する必要がありそうです。
前づけしていれば確かに勝ったかもしれないが、本当にそれで良いのだろうか。無理に抑えずに行かせてやれば今回は着順が上がったかもしれないが、この先クラスが上がったときに本当にそれで通用するのだろうか。
色々と考えることもあるでしょう。立場が変われば視点も変わります。
昨日競馬場で、知らんおじさんが隣で、
「馬鹿野郎め!何で前に行かないんだよ!」
と大変怒っておりました。
しかし、乗ってるほうからすれば、
「競馬が一回勝負なら、そうするよ。」
ということになるのかもしれません。
せっかく一口の視点でも競馬を見れるチャンスを得たのですから、馬券を買う視点だけでなく、常に色々な角度からレースを見れたらいいなと思っています。