一口と馬券
いきなり何の競馬の知識もなく一口を始める人は通常いないでしょうから、やっぱり最初は馬券が入口になるんだろうと思います。
私は、一口クラブがあるということは昔から知っていましたが、友人の強い勧めを受けるまでは興味はありませんでした。一口には興味はありませんでしたが、馬券はその頃も継続的に買っていましたし、競馬自体に興味を失ったことは一度もないです。
馬券好きだからといって、必ずしも一口に興味が出るわけではないと思います。
馬券好きからしたら、一口に誘われたとして、一番の興味は「もうかるのか?」ということでしょう。
私も誘ってきた友人に、そういうことを尋ねた覚えがあります。
友人は、ぬらりくらりと、なんだか儲かるんだか儲からないんだかよくわからない話を語っていた記憶があります。今思うと、本当のこと言えば、「じゃあやらない」って言われるだろうし、かといって、すごく儲かるよ!とかウソを言うこともできなかったんでしょう。
結局私は一口の世界に足を踏み入れてしまいましたが、実際のところ馬券と一口とで、どっちが儲かるのか(より損失が少ないのか)ということを考えることがあります。
馬券の場合は控除率が設定されていて、試行回数、要するに馬券を買う回数が増えれば増えるほど、その控除率を除いた部分の回収率に収束します。券種によって控除率は違いますが、まあだいたい75%の回収率ということですね。
本当は、ここからさらに、例の所得税が課される可能性があるわけですが、そこは今回無視しましょう。
一方の一口ですが、回収率には、募集価格の合計額のうちに獲得賞金の合計額の占める割合である「表面上の回収率」と、維持費出資金等を考慮した「実質的な回収率」の2つがあります。
表面上の回収率は単純に計算すればすぐに出るのですが、実質的な回収率のほうは、維持費出資金、さらには控除される進上金、クラブ手数料なども考慮に入れて計算しなければならないので、計算が面倒です。
その面倒な計算をすると、だいたい、あくまでおおよその数字ですが、表面上の回収率が200%で、実質的な回収率が100%になると思います。1頭平均で募集価格の2倍の賞金を稼がないといけない計算ですから、なかなか厳しいですね。
そして、この一口の表面上の回収率の平均値は、およそ100%に収束します。回収率はその世代の全馬が引退しないと正確な値が出ないのですが、2000年代のクラブ馬の平均値を見ると、だいたい100%に収束しています。
ということは、実質的な回収率の平均値はおおよそ50%程度になるはずです。
馬券が75%の期待値であるのに対し、一口は50%。この時点で馬券に比べて一口がかなり不利であることがわかります。
さらに、一口の場合は、所得税が「源泉徴収」されます。源泉徴収は逃れられません。
(注)源泉徴収されていなくとも、所得税は申告納税方式ですから、所得がある限り基本的には申告しなければいけないということは言うまでもありません。
もちろん、源泉徴収分は、所得がゼロ、又は、マイナスになった場合は還付されます。
しかしながら、以前にも散々書いたように、一口の所得は雑所得ですから、他の所得との損益通算もできなければ、繰越控除もできない。可能なのは、同じ雑所得(総合課税)内で生じた所得との通算のみ。
要するに、一口で利益が出た年は所得税が徴収され、損失が出た年は、その年でその損失は打ち切りということですから、非常に不利だということです。
これを考えると、一口の実質的な回収率はもう少し下がる可能性があります。
実質的な回収率が毎年ピッタリ100%であれば良いのですが、現実的にそういうことはありえないのが難しいところです。
以前、ビジネスで大きな成功を収められた方と馬の話をしたことがあります。その方は馬主もやっていたんですが、今は馬を買うのはやめて、馬券一本なのだとか。
理由は馬券のほうが面白いからだということでした。まあ、どっちが面白いかは、人それぞれしょうが、損得勘定だけで考えれば、明らかに馬券のほうが有利です。そういう面も、その方が馬券に回帰していった理由なのかなと思ったりもしました。
一方で、もし、一口においてトータルでプラスにできるのであれば、それは馬券でプラスになる以上の名誉なことだとも思いました。
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