王双が斬られた
ひさびさの三国志ネタというか、三国志コラボ記事ということで。
一般に読まれている小説(戯曲)の三国志には、歴史上実在しない人物も出てきます。
実在しない人物で一番印象に残るのはやっぱり刑道栄(ケイドウエイ、ケイの字の「つくり」は本当は「おおざと」)でしょう。
赤壁の後の荊州南群攻略戦の零陵で、劉度の配下として出てくる武将です。
「重さ五十斤の大まさかりを振る豪傑」として出てくる割に張飛や趙雲にはまったく歯が立たず、捕えられる。そして、劉備のもとに引き出されると「仁愛」の人であるはずの劉備がなぜか即座に「斬れ!」と命令(笑)。
諸葛亮の口利きで助けられ、劉度に降伏勧告をしてくるということで自陣に戻るも、身の程知らずの謀を孔明に仕掛けてあっさり見破られて死ぬという、もう、文字にするとお笑いキャラでしかないわけです。
まあ、マンガがアニメになった時に時間稼ぎで出てくるような雑魚と同じ扱いなんですが、妙に印象に残る武将です。
しかし、三国志はあくまで正史という歴史ベースの小説なので、そうそう次から次へと実在しない人物を登場させるわけにもいきません。
そのため、小説には、「正史に登場するものの、その事績が明らかでない人物」が結構出てきます。
その最たるものは黄忠ですね。
小説だと、老人キャラとして、荊州から夷陵の戦いまで獅子奮迅の活躍を見せる人気キャラですが、実際は正史に伝はあるものの、10行くらいしか事績がありません。
夏侯淵を斬ったというのは正史に記されているので明らかなのですが、老人などという記述は一切ありませんし、生没年も不明です。
だからこそ、後に戯曲を作った人からすれば、使いやすく加工しやすいキャラだったのでしょう。
小説では、厳顔と、まさかの老人タッグを組んだりと、もうキン肉マン的な(笑)方向性の大活躍すらしてしまうという。
ちなみに、厳顔も正史には老人という記述は一切ありません。
関係ないですけど、三国志で出てくる関羽以外の豪傑(と言われて出てくる人)で、得物の説明でいちいち重さの説明がついたりする人って、だいたい死にますよね(笑)。
刑道栄とか王双とか。そもそも「おおまさかり」っていう時点でイカンですよね。ドラクエじゃないんだからねえ。
そうそう、その王双です。王双も、なんかすごい豪傑だということで、曹真が自信満々に皇帝の曹叡に説明するんですよね。
で、王双っていうと、やっぱり曹真ですよね。
王双で浮かぶのは、王双がやられたことを聞いた曹真が「王双が斬られた、王双が斬られた、ウーン」と言って倒れる横山光輝のマンガのシーンです。あまりにも印象的というか。曹真がその後無念のうちに死んでしまうこともあいまって、何ともやるせないシーンです。
ちなみに、ちなみに、曹真ですが、小説では諸葛亮や司馬懿に徹底的にやられるダメキャラという設定ですが、正史の伝では、まさに知勇兼備の勇将で、配下からも敬慕され誰からも尊敬される武将だったと記されています。
最初に戯曲を作った人は、諸葛亮や司馬懿を際立たせるため、敢えて曹真には損な役回りを引き受けてもらったということなんでしょう。
また話がズレましたが、王双です。
王双も正史に出てくる人物です。
ただし、伝はありません。陳倉で諸葛亮にやられてしまうということしかわかりません。
この辺は、三国志の戯曲・小説を作った人たちに感謝しかありません。
何にも面白くない登場人物を見事に印象に残るキャラに仕上げる技というか何というか。三国志が長く愛される所以でしょう。
馬の話になりますが、最初出資を決めたときは、私もそうですが、まさに皇帝に王双のことを報告する曹真の気分ですよね(笑)。
陛下、来年のクラシックはもらいましたぞ!とでも言いそうになるくらい自信満々。
ところが、なかなか現実はうまくいかなくて、自信の出資馬が敗退(討死)。
「わしはもう出資する自信がなくなった・・・」という状況に。
小説の三国志だと、そこに諸葛亮から、「あんた無能ですね」的な内容の手紙が送られてきて、怒りと情けなさで曹真が気死するという衝撃的な結末を迎えるわけです(笑)。
馬の世界でも、掲示板とかでは、有力馬が負けると、こぞって諸葛亮的な人(笑)が押し寄せてきますが、真に受けてはいけませんよね。曹真のように正面から受け止めてしまうのではなく、笑って済ませるくらいでいないと心がもちません。気楽に行きましょう。
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