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November 05, 2016

思い通りにいかないのが世の中なんて割り切りたくないから

※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体等は一切関係ありません。

 前回までの?あらすじ

 ゼノビア・サラブレッドクラブの設立に尽力した聖騎士ランスロットは、ローディス・ファームの暗黒騎士ランスロットと会見し、ヴァレリア・サラブレッドクラブのやり方に異を唱えるのであった・・・


暗黒騎士ランスロット
「聞こえるか?聖騎士よ。」


聖騎士ランスロット
「・・・貴公らが敗れるのも時間の問題だな。」


暗黒騎士ランスロット
「我がローディス・ファームにとってヴァレリア・サラブレッドクラブなど些細な問題にすぎん。それを知らぬわけではあるまい?」


聖騎士ランスロット
「・・・・・・・・・。」


聖騎士ランスロット
「・・・日増しに高まる会員の不満を抑えきれないようだな・・・?」


暗黒騎士ランスロット
「所詮、ヴァレリア・サラブレッドクラブは我々とは違い劣等クラブだからな。彼らには少々荷が重すぎたということだ。」


聖騎士ランスロット
「実績で会員を縛り付ける、そうしたローディス・ファームのやり方に問題がある、・・・そうは思わないのか?」


暗黒騎士ランスロット
「縛り付けた覚えなどないな。彼らはクラブに支配されることを望んだのだ。」


聖騎士ランスロット
「望んだだと?」


暗黒騎士ランスロット
「そうだ。・・・世の中を見渡してみろ。どれだけの人間が自分だけの判断で出資を成し遂げるというのだ?自らの頭で考え、リスクを背負い、そして自分の責任だけで歩いていく・・・。そんな奴がどれだけこの世の中にいるというのだ?」


聖騎士ランスロット
「・・・・・・・・・。」


暗黒騎士ランスロット
「・・・貴公らのクラブを思い出してみよ。貴公らが汗を流し、命を懸けて守った会員はどうだ?自分の身を安全な場所におきながら勝手なことばかり言っていたのではないのか?」


聖騎士ランスロット
「彼らは月々の維持費の支払いをするだけで精一杯だったのだ・・・。」


暗黒騎士ランスロット
「いや、違う。被害者でいるほうが楽なのだ。弱者だから不平を言うのではない。不満をこぼしたいからこそ弱者の立場に身を置くのだ。彼らは望んで『弱者』になるのだよ。」


聖騎士ランスロット
「ばかな・・・。会員には自分の出資馬を決定する権利がある。自由があるのだ!」


暗黒騎士ランスロット
「わからぬか!本当の自由とは誰かに与えてもらうものではない。自分で勝ち取るものだ。しかし会員は自分以外にそれを求める。自分では大して出資もしないくせに権利だけは主張する。抽選の結果を今か、今かと待っているくせに、自分が抽選に外れたら途端に文句を言いだす。それが会員だっ!」


聖騎士ランスロット
「会員はそこまで怠惰な人間じゃない。ただ、そんなに強くないだけだ。」


暗黒騎士ランスロット
「・・・聖騎士よ、貴公は純粋すぎる。会員に自分の夢を求めてはならない。クラブは与えるだけでよい。」


聖騎士ランスロット
「何を与えるというのだ?」


暗黒騎士ランスロット
「ローディス・ファームの生産馬に出資できるという特権をだっ!」


聖騎士ランスロット
「ばかなことを!」


暗黒騎士ランスロット
「人は生まれながらにして深い業を背負った生き物だ。幸せという快楽の為に他人を平気で犠牲にする・・・。より強い馬を望み、そのためなら他人を虐げることだっていとわない。しかし、そうした者でも反省をすることはできる。彼らは思う・・・、これは自分のせいじゃない。クラブ、調教師、騎手のせいだ、と。」

「ならば、我々が乱れたクラブを正そうではないか。秩序あるクラブにしてやろう。文句を言うことしかできぬ愚クラブ会員には、ふさわしい馬を与えてやろう。すべては我々が管理するのだ!」


聖騎士ランスロット
「意にそぐわぬものを虐げることが管理なのか!」


暗黒騎士ランスロット
「虐げているのではない。我々は病におかされたこのクラブからその病因を取り除こうとしているにすぎん。他の会員に影響を及ぼす前に悪質なガン細胞は排除されねばならぬのだ!」


聖騎士ランスロット
「身体に自浄作用が備わっているように会員にもそれを正そうという気持ちはある!」


暗黒騎士ランスロット
「それを待つというのか?ふふふ・・・貴公は会員という人間を信用しすぎている。会員はより力のある方へ、より強い馬がいるほうへ身を寄せるものだ。」


暗黒騎士ランスロット
「これ以上、敗北者を痛めつけるつもりはないのでね。失礼させてもらうよ。」


聖騎士ランスロット
「ま、待てっ!!」


暗黒騎士ランスロット
「さらばだ、ゼノビアの聖騎士よ。」


THE END

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