現在の種牡馬の中では、サンデー系の種牡馬とキンカメ産駒が圧倒的な存在感を見せています。
ディープやキンカメが良い種牡馬だということは異論はないのですが、産駒の価格が高騰していたり、クラブ馬の場合はそもそも人気になりすぎて手が出ないということもあります。
ディープ、キンカメ以外でも、意外とお得な種牡馬はいないだろうかと、ちょっとだけ、また、大雑把に考えてみました。

この表は、2012年産(現3歳)までのクラブ馬の牡馬を種牡馬別に集計したものです。
一応、今年のリーディングの順位で上から並んでいるはずです。
「産駒初年度」は、その種牡馬の産駒が最初に産まれた年度を表しています。
勝ち上がり率から平均回収率までは、今更説明の必要もないでしょう、いつものやつです。
「勝ち上がりコスト」というのは、私が今勝手に作った指標ですが、「平均募集価格」を「勝ち上がり率」で除したものです。
勝ち上がり率は高いに越したことはないのですが、基本的には、リーディング上位の種牡馬の産駒、募集価格の高い産駒が「勝ち上がり率」も高くなっています。
ただし、1億円のディープ産駒の1勝と、1,000万円のマイナー種牡馬の産駒の1勝を同じように比較するわけにもいきません。なぜかと言うと、1億円のディープ産駒は1勝で終わったら大損です。一方で、1,000万円のマイナー種牡馬の産駒の場合は、1勝で終わったとしてもほんの少しの損で済む可能性があります。
勝ち上がり率が高いからといって、ディープ産駒が必ずしも「お得」とはならないわけです。
そこで、「平均募集価格」を「勝ち上がり率」で除して、「勝ち上がりコスト」を求めました。
これは、当該種牡馬で1勝以上を挙げるために必要となるコストの平均値(単位:万円)です。
例えば、ネオユニヴァース産駒の牡馬だったとしたら、平均募集価格が約2,800万円で、勝ち上がり率が52%です。2,800万円÷52%=5,700万円となります。
つまり、勝ち上がり率が52%ということは、だいたい2頭に1頭勝ち上がる。なので、平均募集価格の馬を2頭買えば、平均すればそのうち1頭は1勝するだろうということです。
数字自体にはあまり意味はありません。数値を種牡馬間で比較したいためだけにある数字だと思ってください。
この数字は「コスト」ですから、低い金額のほうが良いわけです。
そうすると、実はゴールドアリュールが3,524万円で1位になります。ゴールドアリュール産駒の牡馬は、安めの金額設定の割には、中央で勝ち上がってくれる可能性も高く、「1勝」を目指すならお買い得な種牡馬だと言えます。あくまで「1勝」です。2勝以上した場合のこととかは、この数字にはまったく反映されていません。
その証拠に、ディープやキンカメはもの凄く勝ち上がりコストが高くなります。そもそもディープやキンカメの牡馬の場合は、1勝で終わってしまったら大損なわけですから、コストが高くつくのは当然です。ディープ・キンカメはあくまで長打を目指す種牡馬ですね。
「勝ち上がりコスト」を出しましたが、これ自体はあまり意味はないですね。だって、1勝すればいいってわけじゃないですから。ほとんどの場合、1勝馬だと損で終わってしまいます。場合によっては、維持費がかさんで未勝利馬よりも損が膨らむこともあります。
ということで、勝ち上がりコストに回収率を反映させた「指数」を出しました。これは、「勝ち上がり率×回収率×100」という値です。
単純に、回収率と勝ち上がり率を乗じて、勝ち上がりと回収率の両方を反映させた数値としました。最後に100を乗じているのは、単に数字として見やすくするためで、何らの意味もありません。
最終的には、回収率が高い種牡馬が好ましいです。
ただし、あまりにも勝ち上がり率が悪かったりすると、運よく当たりを引き当てることができればよいですが、そうでない場合は一敗地にまみれることになります。その辺を考慮した指数ということです。
この指数は、単純に、値が高ければ、「勝ち上がり率高く」、かつ、「回収率が高い」ということになるので、高ければ高いほど良いです。低いと、勝ち上がりも多くないし、勝ち上がった中からも上級条件に進む馬がほとんどいないということを意味します。
以下で、指数の高い順に表を並べ替えてみました。

この指数の値も、数字そのものにはあまり意味はありません。勝ち上がり率が50%で回収率が100%だったら、指数は50になります。勝ち上がり率が50%で回収率も50%だったら、指数は25になります。
この値も、数字そのものよりも、種牡馬間の比較のための数値と思っていただいた方がしっくりくると思います。
指数の最上位に来るのは、ゴールドアリュールです。募集価格も安めの馬が多く、勝ち上がり率も50%は超えていて、さらに、エスポワールシチーなどの超大物も出る可能性があるという、一口にとってはこれ以上ない種牡馬と言えるでしょう。にもかかわらず、そんなに募集時に人気になることはないですから、より一層お買い得な種牡馬と言えそうですね。
次がステイゴールドです。オルフェーヴルのような超大物も出ますし、勝ち上がり率も実は悪くない。ただ、問題は、この表だと平均募集価格が2,315万円になっていますが、もうこんな値段ではステイゴールドの牡馬を買うことはできないという点です。活躍馬が増えるにつれて、産駒の価格も高騰してしまいましたから、ステイゴールドについては、この指数を鵜呑みにはしないほうがよいと思います。それでも、いい種牡馬には違いないです。
ハーツクライも、同様に産駒の価格が高くなってきていますので、実際はもうちょっとコストパフォーマンスは低いかもしれないですね。
シンボリクリスエスも頑張っていますね。エピファネイアを出している割には、常に産駒の評価は高くないので、人気の盲点になることもあります。この指数の順位からするともっと見直されても良いのかもしれません。
その後に続くのが、ディープ、キンカメです。ディープは勝ち上がり率は高いですが、その分産駒の平均募集価格も高いので、思ったほど指数は伸びません。でも、かなり高い確率で勝ち上がってくれて、なおかつ、G1馬も出てくるわけですから、安心感はありますよね。
キンカメも、隙がない種牡馬ですね。牡馬は安心して買えます。
ディープ、キンカメより下はちょっと差がある感じでしょうか。中庸な種牡馬は飛ばして、下位争いに目を移してみましょう。
ここで、一つ注意事項ですが、世代数が少ない種牡馬は、不利な指数が出ます。
世代数が少ない種牡馬、例えばハービンジャーは、2012年産の1世代しかいませんので、回収率が極端に低くなってしまいます。この先、古馬になってから稼ぐ予定の賞金がまだ反映されていないわけですから、他の古馬を多数抱える種牡馬に対して圧倒的に不利な立場になります。
その点はご注意ください。
その熾烈な下位争いなんですが、私は、有名種牡馬の中では、圧倒的にチチカステナンゴが最下位なのかと思っていましたが、違いました。
度肝を抜くような成績だったのは、コンデュイットでした。
もちろん、先ほど言ったように、コンデュイットは2世代しかデータのない種牡馬ですから、不利なのは明らかで、指数が低くなるのは当然のことです。
しかし、それにしても、この勝ち上がり率と平均獲得賞金は尋常ではないですね。同じ年に種牡馬デビューしたマツリダゴッホと比較すればよくわかります。
もう残りの世代も少ないですが、よっぽどの自信がない限りは手を出さないほうが賢明でしょう。
もう一頭、こちらは世代数が多い割に勝ち上がり率が極端に低いです。ファルブラヴです。
ファルブラヴの牡馬(セン馬含む)からは、トランスワープのように重賞勝ち馬も出ているのですが、産駒全体を平均すると、とても手が出る種牡馬ではありません。コンデュイットと違って8世代も産駒がいるにもかかわらずこの数値ですから、より一層危険と言えなくもないです。こちらも、自信がないのであれば無理に手を出さないほうがよいでしょう。
チチカステナンゴは、この表の挙げた種牡馬の中では下から3番目でした。もう産駒がデビューすることもありませんので、今更振り返っても仕方ありませんが、とにかく輸入種牡馬は外れると怖いということだけが心に強く残ります。
そして、その次がゼンノロブロイ。先日、クラブ馬の牡馬として初めてリアファルが重賞を勝ちました。ただ、それをもってしても、今までの負の遺産と言うか、募集価格が高い割に上級条件に進む馬が少ないという現実をひっくり返すまでには至っていません。何せ、1世代しか産駒がいないハービンジャーに負けてしまっていますからね。
ハービンジャーは、少なくとも、ゼンノロブロイよりは上の位置づけで良いと思います。これから世代数が増えてくれば、最終的には、この表の真ん中よりも上に行きそうです。
この表を見る限り、もう少しハービンジャーの牡馬の値が下がってきたら、面白いかなと思えます。
最初に言いましたが、あくまで、クラブ馬の牡馬に限った、大雑把な表です。
これだけで何か確定的なものが言えるわけでもないですし、個別の馬そのものが大事であることは言うまでもありません。
それでも、あまりにも期待値が低そうなところには、自信がないならば行かないほうがいいのかなとも思います。